【ウォーターマン】カナダ製「クルセイダー」前期型(c.1946-48)+レストア編
公開日:
:
最終更新日:2017/01/09
01-万年筆紹介, 02-万年筆修理・補修関連, 03-修理・補修ツール、消耗品, M05-WATERMAN, N04-カナダ, s04-レバー・フィラー式
【WATERMAN】Early “Crusader (Taperite)” (c.1946-48)
レストアラーの鬼門なペン。戦後直後の粗悪プラスチック樹脂を使用したモデルの一つで力を入れすぎたり、無理矢理ひねったりするとポキポキと簡単に折れるかなり破壊・破損する確率が高いペンとして国内外で有名です。また設計的にも怪しい部分が多々あり、ペン芯はノックアウトブロックでペン先方向に叩き出すことができず、逆方向(胴軸側)にしか出せない仕様のようで取り出しはかなり難しいですね。今回のこの個体については前オーナーのお手入れがそれなりに行き届いていたこともあり外観はズタボロだったものの、首軸回りやペン芯はきれいにクリーニングされておりインクの吸入・排出は問題ありませんでした。但し首軸と胴軸の分離には手こずらされました。外れないんですよこれが。ここは慎重にやらないとマズいと思い、45℃程度のぬるま湯を用意して1分程度漬けては少しづつ首軸と胴軸を動かしてはまた1分漬けてを繰り返してやっと20分後ぐらいに外れてくれました。う~~ん、ここまで手こずったのは初めてでした。慌てたり、焦ったりしたらまずダメですね。後になって思ったのですがメガネの超音波洗浄器を利用するともっと良いかもしれませんね。それと心配していた粗悪な接着剤もきれいに除去されていたので問題はありませんでした。前オーナーに感謝です!あとは一般的なレバー・フィラー式のインクサック交換の要領でokです。
※↑外観はズタボロでしたが、ニップル周りはキレイでした。写真右はレストア後。
ペンですが、1946~48年まで販売されていた初期型「クルセイダー」でオープンニブ・タイプのスタンダードとセミフーデットニブ・タイプのテープライトの2種類あります。48年以降は金属キャップのデザインが変更となりゴールドで横縞模様となります。後期型クルセイダーの方がポピュラーかもしれません。しかし当時のパーカー21や51のフーデットニブの人気に押されて商業的に成功したペンとは言い難いようですが、パーカーより字幅が細くガチニブでインクフローがいいので私的にはお気に入りの一本です。
※↑ニブと新しいインクサックの装着(サイズは#16)。
レストアにここまで時間と手をかけたペンはあまりなく、今では思い出に残るペンの一つとなりました。軸色は黒に見えますがかなり濃いバーガンディ色です。そして粗悪な樹脂のせいか今では濃い茶色に退色が進んでおり何とも言えないノスタルジックなペンとなっております。ズタボロなペンでしたがなんとか下の写真のようなところまでレストアしてみました。結構気に入っております。
※↑思った以上のデキで自己満足しております。写真右側は当時のAD。
このペンも含め1940年代(戦中・戦後)に製造・販売されたウォーターマンは上記の通り樹脂が粗悪なので、興味のある方は扱いに十分注意してください。メンテやレストアが面倒なので最初から「手を出さない」という勇気ある選択肢もアリだと思います。
関連記事
-
【パーカー】デンマーク製「デュオフォールド AF」(c.1948-52)+レストア編
【Parker】"Parker Duofold AF (Aluminium Filler)"(c.1
-
【ヴィーナス】モデル名不詳(c.1950s)
【VENUS】“Unknown Models ” (c.1950s) エスターブルック互換ニブ
-
【シェーファー】「TMタッチダウン」シリーズ(c.1950-52)
【SHEAFFER】“TM Touchdown” (c.1950-52) タッチダウン「FAT
-
【シェーファー】カナダ製「TDタッカウェイ・センチネル・デラックス」(c.1949-50)+復活編
【SHEAFFER】 Touchdown “Tuckaway Sentinel Deluxe” (c
-
【ウェアエバー】「ゼニス195」(c.1944-50)
【WEAREVER】"Zenith 195" (c.1944-50) かなり以前にレバーフィラ
-
【ウォーターマン】「チャールストン」(c.2000s )+ EFニブ
【Waterman】” Charleston ” + EF nib(c.2000s ) Made i
-
【シェーファー】カナダ製「バリアント」(c.1949-50)ファット・タッチダウン
【SHEAFFER】 Early Touchdown "VALIANT" (c.1949-50) m
-
【ウォーターマン】米国製 「クルセイダー」 後期型(c.1948-50s) + オープン・ニブ
【WATERMAN】"Crusader (open nib)" late version. (c.1
-
インクサックとニップル そして “O”リング
サックサイズとニップルの関係についてお話しします。私は長らく単純に胴軸の直径に合わせてサックサイズを
-
【パーカー】デンマーク製「ビクトリーMk.V」(c.1950s-60s)
【Parker】"Parker Victory Mk.V"(c.1950s-60s) Made in