【ウォーターマン】英国製「 L2 」（c.1950s）

【Waterman】” L2 ” （c.1950s） Made in England.

イングリッシュ・ウォーターマンの第一弾！アメリカ法人倒産後、生産拠点がヨーロッパなどに移っていくのですが、ここからウォーターマンの混迷が始まり1970年代初めに現在のウォーターマン社の基礎となる法人が設立されるまで混沌が続きます。50年代後半～60年代は工場がある生産国（英国・フランス・カナダ、他にもあるのかな？）においてそれぞれ企画・製造・販売が行われるようになり、この時代のウォーターマン製品を体系的に説明するのはかなり難しくなります。またデザイン的に珍妙な製品も多々あり、面白そうなネタになるペンを今後少しづつ取り上げていきたいと思います。

この個体はミント状態で購入したもの。ペンは使用されていましたが外観・内部パーツなどは販売当時のままでチョークマークも残っておりました。また上の写真（右側）のとおり「WATERMAN’S」の文字がスタンプされたオリジナルのインクサックが装着されておりました。外観はアメリカで販売されていた「スカイライター」の最終バージョンとほぼ同じ（のように見える？）であり、違いは「スカイライター」が鉄ニブ・クリップやキャップリングがクロームメッキ仕様になっているのに対して「L2」は英国製14kニブ・金メッキ仕様となっている点ですね。エントリー・レベルの商品にもかかわらず、バランスの良いすこぶる実力派の万年筆のようでとても書きやすくて扱い易いペンに仕上がっています。また英国製ウォーターマンの特徴の一つとして（全てではないが……）胴軸とキャップの接合方式がネジ式が多いような気がします。私的にはネジ式が好きなので大歓迎です。「ACCOUNT」と刻印されているペン先は当時のカーボン紙を挟んで複写ができるマ二フォールド・ニブの一種らしく、英国製ニブとしては例外的に字幅が細くてガチニブです。

※↑中々立派なニブです。写真右は胴軸のインプリント。

全体的なデザインですがこの当時の新・旧ウォーターマンのアイデンティティがミックスされており、「C/F」と同じ新しい「Vクリップ」を採用しながらも吸入方式は古臭いレバー・フィラー式のままだったり、クリップ上部の天冠には戦前のモデルでよく見かけた「グローブマーク」（地球マーク？）が付いていたりと何て言うか持てるもの全てを投入した感があります。見方によってはかなり珍妙なデザイン構成でこの時代の混迷ぶりが伺えますね。唯一の難点はニップル上部の首軸と胴軸をジョイントする部分に斜めにスリットが入っており、スリットの窪みにシェラックの残りカスが付着していたので首軸と胴軸を分離・清掃するのが大変でした。この部分にシェラックを塗るのはどうかな？ワセリンで十分な気がします。ペンのスペックは全長約13.3cm、直径は最も太い部分で約10mm程度で小回りが利きコントロールし易いです。サックサイズはウォーターマン標準の#16s。