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【シェーファー】カナダ製「TDタッカウェイ・センチネル・デラックス」(c.1949-50)+復活編

【SHEAFFER】 Touchdown “Tuckaway Sentinel Deluxe” (c.1949-50) made in CANADA. ☆ re-Fixed ☆

昨年の「事故編」以来約1年半ほど放置状態でしたが、この度奇跡的に同型のペン先がジャンク状態でそしてナゼか米国で発見・購入できましたので、早速交換・レストアに踏み切りました。しかし「トライアンフ・ニブ」をバラした後の組み上げ作業が想像以上に難しかったので、このペン先について改めて記事にしてみました。あまりに専門的過ぎるキライはありますがお付き合いくだされば幸いです。まずは復活した写真から……。

  

※交換したニブの状態(未調整)はマズマズでしたね……。「中字」のようです。

「トライアンフ・ニブ」は構造上、オープン・タイプ・ニブのようにペン先とペン芯を合わせて首軸に差し込むことができないため、微妙な調整とある程度の経験とカンに頼らざるを得えない工程が多々あり「素人修理はやめたほうが良い」と言うのが私の考えです。バラすのは比較的簡単だが(それでも難易度は高い方だと思いますが……)元に戻せる可能性は低いという意見をよく耳にします。また運良く戻せたとしてもタッチやインクフローが変ったなど違和感を訴える方々が多いとも言われております。本来なら写真の通り首軸が付いているので首軸ごと交換(首の挿げ替え)すれば簡単に済みますが、ニップル部分にサックプロテクターがハマらないという症状(ジャンクの所以)がありましたので、ペン先を外し交換することにしました。そしてどうしてもこのペンだけは復活させたいと思い、リスクを覚悟の上でレストアに挑んでみましたが……えらい目に合いましたね!!

❒「トライアンフ・ニブ」の分解

  

※分解してクリーニングを終えた状態です。

ペン先、首軸、ペン芯をバラすと写真上・左のようになります。最初の関門はペン先と首軸の分離作業でジョイント部分を集中的に中性洗剤やアスコルビン酸など使ってドブ漬けと歯ブラシによる洗浄を何度も繰り返してキレイにしていきます。概ね2日間程度でやっとペン先と首軸のスクリューが少しづつ動き始めました。このときプライヤーなどの金属系工具を使用すると必ずニブが傷ついたり、変形したりしますので絶対使わない方が良いと思います。ここはゴム板やゴム製グリッパーを使って焦らず、無理せずゆっくりと回して分離していきます。(写真上・中央)次にペン先と首軸が分離したらペン芯が首軸に刺さった状態(写真上・右)となり、ここからペン芯を引き抜いていきます。この引き抜き作業は細心の注意が必要で首軸とは反対方向に引き抜くのですが、真っ直ぐ引き抜こうとすると首軸内部でペン芯が折れてしまう可能性大ですのでペン芯をぬるま湯に漬けつつ捻りながらゆっくりと引き抜いていきます。これで分解作業は終了となります。

❒「トライアンフ・ニブ」アッセンブルの難しさ

  

※調整直後のペン先・ペン芯。写真右・右側がオリジナル・ニブで左がリプレス用ニブ。

さて、元に戻す作業(ペン先の入れ替え)はバラすより難易度が高くなりますが、以下が組み上げの順番となります。(この先写真と撮っている余裕はありませんでした)

①ペン先をゆっくりと回しながら首軸に固定させて位置を決めます。ペン先を固定したら切り割り位置を首軸かニップル周辺の目立たない箇所にマーキングします。

②一旦、首軸からペン先を外します。

③ペン先側からペン芯を挿入していきます。このとき①でマーキングした位置を頼りにペン芯を正しい位置に挿入していきます。

④ペン芯が刺さった状態で再度首軸とペン先をジョイントさせます。ここでペン先・ペン芯の位置に問題が無ければ作業は終了となります。

しかし……そうはいかないのが現実でマーキングしても、ペン先・ペン芯の位置がずれるのが当たり前のようです。そこで微調整・経験とカンの出番となりマーキングした位置からペン芯の中心を微妙にズラしてみるなどの工夫と微調整が必要になり、②~④の工程を何度か繰り返すハメになります。但し、②~④をしつこく繰り返すとスクリューがアマくなったり、首軸内部が緩くなってきますので注意が必要です!!

「トライアンフ・ニブ」を弄るのは個人的にはお勧めできません。どうしてもやってみたいと思うのであれば、完全自己責任で破損覚悟の上挑んで下さい。残念ながらこれに限っては「ビギナーズ・ラック」は無いと思って下さいね!BEST of LUCK !!

❒「復活」その後……

組み上げ後は構造的・機能的には問題なく動作しており懸念していたペン先の違和感やタッチの変化などは感じられず、むしろ使用感が向上し仕上がりもマズマズでしたので出来栄えには満足しております。また余談ですが、ペン先購入時にペンシル(カナダ製)も見つかり嬉しい誤算でした。元箱(ケース)が欲しいところですね。最後に今回のレストアはペン先が見つかるまでの忍耐力、作業中の緊張感と集中力、さらにペン復活への期待と執念などが交錯してかなりのエネルギーを使い果たしました。こういった気合の入ったレストアはめったにありませんが、良い経験だったと思っております……。最近は前回もそうでしたが、ジャンク・ベースからブツを復活させることに喜びを覚えたようですナ。

  

※カナダ製のペンシル。こんなモノもあるんですねぇ~!!

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