【ウォーターマン】カナダ製「 W5 」（c.1950s）

【Waterman】” W5 ” （c.1950s).  Made in Canada.

1950年代ウォーターマンのフラッグシップ・モデル「W5」を紹介します。この個体はカナダ製「W5」で同時代の英国製「W5」とはかなり外観のデザインやディテールが異なります。海外では長らくこのペンの正体が判らなく私のような戦後のウォーターマン好きの間では事あるごとに論争の的となっていたペンでしたが、最近はカナダ製「W5」ということで落ち着いているようです。まずは写真をご覧ください。

※外観と胴軸のインプリント。

カナダ製「W5」はペン先や胴軸のインプリントに一切「W5」の刻印が無いことです。特徴として尻軸が尖がって（英国製は葉巻型）おり、クリップが旧世代の「段付（stepped）アールデコ・クリップ」、ペン芯もこれまた旧世代のフィンが見えないノッペリとしたタイプが使われております。また胴軸のインプリントにモデル名の刻印はなく、ペン先はカナダ製の伝統に則り「IDEAL 14KT CANADA」と刻印されております。外観のデザインは英国製「W5」とはかなり雰囲気が違い、唯一同じ部分は三重のキャップリングのみですかね。

※フラッグシップ・モデルに相応しい大型のペン先と特徴的な尻軸。

※「段付アールデコ・クリップ」（写真左）と「モダン・アールデコ・クリップ」（写真右）

評判通り一言でいって素晴らしい万年筆です。作り込みも良くシャーシや各パーツが丈夫なうえ手抜きが一切無く、会社倒産前後のゴタゴタにもかかわらず最後の最後までパーツのクオリティを落とさず、外観のデザインはともかくここまで完成度の高いペンを製造していたとは「あっぱれ」としか言いようがありません。この時代のウォーターマン・ペンをいろいろ試してきましたが特長的なペン先を持つモデル（テープライトやW1ニブなど）以外は、はっきり言ってこのペン一本で全てが事足りるような気がします。私はペン（モノ）に対して感情移入することはまず無いのですが、このペンからは「ウォーターマンの意地」を感じましたね。

ペンのディテールですがセミ・フレックス・ニブの少し太目の細字でシナリと弾力性の塩梅が良く、ペン先の弾み方（決して柔らかいニブではありません）が心地良く、また大きさの割に軽く仕上がっているのでコントロールし易いところが最高に気に入っております。表現は難しいのですが、自動車に例えるとその昔シトロエンのハイドロマチック（油圧）・サスペンションのような一瞬フワッとした感じで「あれっ？」って思うのですが、コーナーリング時には粘りがあり「お、意外に硬いじゃネーか？」というアノ感覚に似ていますね。乗り心地（書き心地）はバツグンです。またナゼか罫線の入ったペーパーに書き始めると何だか罫線がウザく感じ、無地のペーパーに書きたくなる不思議な一面もあります。いろいろな意味で面白く尚且つ楽しませてくれるペンですね。軸色はクラシックなブラックでペンの全長は約13cm、胴軸の直径は約12mm。キャップの刺さりが浅く私には少々長さを感じますが、バランスはすこぶる良いです。レバーフィラー式でインクサック・サイズは#16。