*

趣味としての万年筆は持っていないの?①

当ブログを読んで頂いている皆さん、今年もよろしくお願いいたします。

いきなりのタイトルで……、私はいくつかの異業種交流会に顔を出しておりまして、昨年末ある交流会の忘年会に出席した時に何人かの知り合いからぶしつけに「万年筆を修理・補修をしてるって聞いたけど、趣味としての万年筆は持っていないの?」って聞かれて、なぜだか答えに窮してしまいました。「確かにそう言われればどうなんだろう?」とこの年末年始に考えされられました。基本的に修理・補修をして日常的に使えないペンは買わないことにしているので「基本的には無い」と答えておりますが、ただ修理・補修のことなど考えずに興味と好奇心で買ったペンが無いわけでもない。もしかしてそれが「趣味としての万年筆」なのだろうか……?彼らから「もしそういう万年筆があるなら、ぜひ晒してくれ!」と言われたので、なんだか自分自身はまだ納得・結論は出ていませんが……ご紹介することにします。(軽く受け流してください)

❏MOORE “Fingertip” 96-B(ムーア「フィンガーチップ」96-B)1940年代後半【細字】

moore_01 moore_02

このペンは見た通り特異なペン先・首軸をもっているので好奇心で買ったペンです。ムーア流のインレイド・ニブ、首軸はスチール製でフーデットタイプ、ペン先は14kという他ではあり得ないデザインですね。永らくペン先の調子が良くなかったのでかなりの間放置しておりましたが、この年末にペン先を調整していただきやっと筆記が可能になりました。当時の最先端技術(スチール製首軸&インレイドタイプフーデットニブなど)を詰め込むなど意欲的なデザインですが、試し書きをしてみてインレイド部分とスチール首軸の合わせが甘く、長時間筆記するとインレイド部分の両側と切り割りからインクが滲んできますし、フーデットタイプ故にペン先が汚れてきます。結果、スチール首軸全体にインクのステインが付着してティッシュで拭いても中々インクが落ちてくれません。きれいに使うには頻繁に首軸を水洗いしなければならないようですね。(もう少し調整・研究が必要だと思いますが……)ペン先は同時代のシェーファーのトライアンフ・ニブの二乗ほど呆れるぐらいガッチガチのガチニブです。インクフローも良く、また首軸がスチール製のためかペン全体がボトムヘビーで、何ていうか首軸やペン先がペーパーに吸い付く感じがイイですね。ちょっとこの感覚は初めてでした。ここの部分は素直に感動しました。

moore_03 moore_04

さて全体的な評価としては、ペン先のアイデアは決して悪くないと思いますが煮詰め方が甘かったような気がします。そしてこのアイデアとオイシイ部分は十数年後シェーファーのPFMやインペリアルに持っていかれた感じがします。おそらくシェーファーはこのペン先に可能性を見出した上でデメリットな部分を徹底的に研究したのではないかと思います。ダイヤモンド型のインレイドニブ、プラスチックの首軸、ペン先のエビ反り、ペン芯も先端部分を露出させるなど単なる思いつきでそうなったとは考えられず、かなり計算高く首軸回りを設計したのではないかと感じております。結局、メーカーとしての「ムーア」は高品質な製品を製造していたにも関わらず50年代中頃に廃業してしまいました。

❏BAYARD “LE 2000” No.754(バヤール「2000」No.754)1950年代【細字】

bayard_01 bayard_02

1960年代中頃まで存続していたフランスの万年筆メーカーのペンで比較的高品質な製品をリリースしていたようです。オーソドックスなレバー・フィラー式ペンでフランスらしい上品なデザインとカラーリングが「◎」です。軸色は赤味がかった茶色と言ったところでしょうか。このペンは「ムーア」とは違い、十分日常的に使用できる実用万年筆で意外にも同時代のパーカー・デュオフォールドよりガチニブで特筆すべき点はかなり細い字が書ける上、尖がったところも無くインクフローもすこぶる良いのでとても使い易いペンですね。フランスにもこんな非凡なペンがあったのかと思い知らされます。

長所・短所としては構造上の欠点は無いのですが、ペン先とペン芯の合わせに微妙な調整が必要なのとJ-BARやインクサックは汎用品でリプレイス可能ですが、ペンが壊れるとパーツの流通が殆ど無いのでレストアが難しくなります。こういった理由でペンの再生率が低く完動品にはどうしても高値がついてしまうようです。マイナー・ブランドにはこういった問題が常につきまとっており、このペンも日常的に使用するのはかなり勇気がいるような気がします。私自身このペンを日常的に使用する決心がまだついておりません!!

bayard_03 bayard_04

少しですがバヤールのニブについて調べてみました。写真上左の「No.36」はメインストリーム・ラインのペン先で珍しいものではないようです。また少し上級ラインには「No.40」、最も大型のペン先として「No.80」がありこちらはレアな上とても人気があるようです。ペン先にペン先のイラストが刻印されているのがカワイイですね。

以上、2本を晒しました。記事中の間違いや誤解もあるかもしれませんが、ご容赦を!!

関連記事

【エスターブルック】「J – Transitional」+分解編(c.1940s)

【ESTERBROOK】"J-Transitional" + Linton nib (1940s)

記事を読む

【パーカー】英国製「 “17” スーパー・デュオフォールド 」(c.1962-64)+ビーク・シェイプド・ニブ

【Parker】"17" Super Duofold(c.1962-64)<Beak Shap

記事を読む

【プラチナ】「プレジデント」(c.2000s)

【Platinum】”PRESIDENT” (c.2000s) Made in JAPAN.

記事を読む

趣味としての万年筆は持っていないの?⑦ =10/28追記(ペン先交換しました)=

「趣味としての万年筆は持っていないの?」の第七弾!! 今回は1920年代~40年代にかけて一世

記事を読む

趣味としての万年筆は持っていないの?⑩

「趣味としての万年筆は持っていないの?」の第十弾!! ❏"MARSHAL" (1950年代・オ

記事を読む

【パーカー】フランス製「 “17” レディ・カスタム 」(c.1960s-70s)+オープン・ニブ

【Parker】"17" Lady Custom(c.1960s-70s)<Open nib&

記事を読む

【マビー・トッド】インド製「スワン・ジョッター」 (c.1960s) + エアロ・フィラー式

【MABIE TODD & Co.】”SWAN JOTTER” (c.1960s) made

記事を読む

【シェーファー】タッチダウン「アドミラル」(c.1950-52) + ショートハンド・ニブ

【Sheaffer】Tounchdown "Admiral" (c.1950-1952) + Sho

記事を読む

【エスターブルック】英国製「LJ」(ロング・スレンダー)+リントン・ニブ(c.1950s)

【ESTERBROOK】"LJ" J-Family  (c.1950s)  U.K. Model w

記事を読む

【パーカー】デンマーク製「ポピュラー」(c.1948-53)

【Parker】"Parker POPULAR"(c.1948-53)Made in Denmark

記事を読む

趣味としての万年筆は持っていないの?⑪

「趣味としての万年筆は持っていないの?」の第十一弾!! ❏"Sh

趣味としての万年筆は持っていないの?⑩

「趣味としての万年筆は持っていないの?」の第十弾!! ❏"MAR

趣味としての万年筆は持っていないの?⑨

明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。 「

趣味としての万年筆は持っていないの?⑧

「趣味としての万年筆は持っていないの?」の第八弾!! ❏Skribe

【マビー・トッド】インド製「スワン・ジョッター」 (c.1960s) + エアロ・フィラー式

【MABIE TODD & Co.】”SWAN JOTTER”

→もっと見る

  • 2024年4月
    « 1月    
     123456
    78910111213
    14151617181920
    21222324252627
    282930  
Translate »
PAGE TOP ↑