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趣味としての万年筆は持っていないの?⑦ =10/28追記(ペン先交換しました)=

「趣味としての万年筆は持っていないの?」の第七弾!!

今回は1920年代~40年代にかけて一世を風靡した「コーラル・レッド・カラー」の万年筆二本をご紹介いたします。この時代メジャー・メーカーからマイナー・メーカーまで様々なデザインのセルロイド製「コーラル・レッド・ペン」がリリースされておりました。しかし実用性やレストアの観点から私の守備範囲を逸脱しており購入には躊躇していたのですが、数年前より1、2本は押さえておきたいと思い少しずつ情報集めをはじめました。人気どころでは「パーカー・ラッキー・カーヴ」やデンマーク製「モンブラン “No.2xx” シリーズ」などがありますが、総じて高価な上に売り物の数が少なく比較が難しいのでこれらはパス&スルーすることにしました。そこで「現状渡し品」(ジャンク?)& “3rd Tier” メーカーが製造したブツという条件下で気長に物色することにしました。私的には戦前・戦中に製造されたセルロイド製ペンの手触りや発色の良さは認めつつも、耐久性・実用性・メンテナンス性には疑問を持っており、またレストアする上でのリスクや難しさ(セルロイドが痩せるとパーツの分解が困難だったり、高温のお湯に漬けると変形・変色のリスクがあります)を考慮に入れると安直に手を出すべきではないと考えておりました。そして待つこと数年、やっと納得ができるブツを見つけたので今度購入・レストアに踏み切りました。

❒「プレジデント」(PRESIDENT / c.1935~40)

 

※「現状渡し品」(レストア前)状態。(セラーさんの写真を編集)

この「プレジデント」は製品名なのか、メーカー名なのかは判りません。クリスチャン・オールセンの自社ブランド「PENOL(ペノル)」のサブ・ブランド商品なのは間違いありませんが、写真の通りシャーシやキャップ等には「PENOL(ペノル)」の刻印が一切見当たりません。全体的な特長しては適度な重量感があってチープ感が無く、質感も上出来でちょっと驚いております。また工作精度も悪くないのでクオリティ的にも十分満足できるレベルにあると思います。但しキャップがオリジナル・パーツかどうか……判りません。私的には長さや太さがちょっとアンバランスな感じを受けますね。

  

※シンプルなインプリント。キャップの二重リングが無いのはご愛嬌ということで……。

レストアの方は分解・洗浄が主な作業でキャップの二重リング欠落以外はパーツの破損や欠損は無かったので、比較的レストアの手間は掛かりませんでした。但し、セルロイド故に変形・変色の心配や高温のお湯が使えないなど普段より神経は使いましたけどね。あとはサック交換、ペン先の微調整程度で作業は終了いたしました。

 

※首軸と胴軸の分離は難儀しました。写真右は珍しいオールセン製プレッシャー・バー。

ペンのディテールは全長がキャップを閉じて約11.2cm、胴軸の直径が最も太いところで約11.5mm。キャップを尻軸に差すと全長が14.2cmとなり、典型的なショート・サイズ・ペンですね。またバランスや安定感が良く、シャーシ剛性も高いので扱い易いペンに仕上がっております。ペン先はペノル製14k・極細字~細字程度のセミ・フレックス・ニブ。クセが無く素直なペン先で扱いに困るようなことはありません。極々普通のペン先ですね。

 

※何の変哲も無いペノル製14kニブとペン芯。

❒「シェフィールド・ペン」(Sheffield Pen / c.1940s)

 

※「現状渡し品」(レストア前)状態。(セラーさんの写真を編集)

「シェフィールド・ペン」はナゾが多く情報や資料は全く持ち合わせておりません。またモデル名も不明であり正直何が何だか解りません。信憑性は低いのですが、デンマークのミラー・ペン・カンパニー(Miller Pen Company)のサブ・ブランド?として英国メーカーへ製造発注した製品ではないか?という説もあるそうです。(どこのメーカーかは不明、ただキャップやクリップ周りのデザインがサミット・ペンぽぃ感じが……)まァ~、英国製なことは間違いないですがこれ以上詮索するつもりはありません。しかし素性は別として外観は「パーカー・デュオフォールド NS」に酷似しているものの、数ある「コーラル・レッド」ペンの中でもキャップと尻軸(ブラインド・キャップ)にジュエルが付いたモデル(ダブル・ジュエル仕様)はあまり見かけ無いので造形的には希少な部類に入るかも知れませんね。そして「プレジデント」同様、比較的クオリティや造り込み精度が高いので安定感とバランスの良さが伝わってきます。ただ唯一残念だったのはペン・ポイントのイリジウムが死にかけておりました。ダメ元覚悟で調整した結果、何とか書ける程度にはなりましたが何れペン先の交換が必要となる時が来るでしょうね。

  

※「コーラル・レッド」ペンでは珍しいダブル・ジュエル仕様。右はインプリント。

レストアは主に分解・洗浄作業が中心でしたが、ペン先に問題はあるもののパーツの破損・欠損はありませんでした。但し尻軸を1時間程度水に浸していたところ、薄茶色に変色してしまい正直焦りましたね。これはシミクローム・コンパウンドをかける事で元の黒色に戻すことが出来ました。(汗””)後はペン先・ペン芯を引き抜いて調整し、インクサックは新品が装着されておりましたので交換せずにレストアは終了いたしました。

※インクサックは黒色ですが、ラテックス(ゴム製)では無く樹脂製のようでした。

ペンのディテールは全長がキャップを閉じて約13.4cm、胴軸の直径が最も太いところで約12mm。キャップを尻軸に差すと全長が15.5cmとなります。全体的なタッチとして特筆すべき点やこれといった特徴・欠点もありませんが、中庸でバランスの取れたペンに仕上がっております。ペン先の字幅は中字~中太字程度の英国製汎用14 ct ニブ、先に説明した通りペン・ポイントの消耗が激しいので何れ交換が必要となることでしょう……。(★10/28追記=同等品が見つかりましたので、ペン先を交換しました!)

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※何とか書ける程度まで調整してみました。(写真中央から右へ)

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2018年10月28日写真追加(ペン先交換。通常タイプ「XF~F」のようです。)

この度は実用性やメンテナンス性を完全に無視して購入・レストアに踏み切りましたが、思っていた以上に「これは意外にも使えるナ!」と感じました。また、ここ最近は「現状渡し状態(ジャンク?)」からブツを復活させることにハマっております!まァ~、レストア道楽だと思って頂ければ幸いです。そして今回は総合的な評価はしないことにしますので、判断はこの記事を読んで頂いた皆さんに委ねることにしますね。それではまた~~!!

※如何にも”3rd Tier”っぽいデザインが「◎」です!?

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