【シェーファー】 “Tip – Dip” タッチダウン「カデット & クラフツマン」(c.1953-63)
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最終更新日:2017/01/09
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【Sheaffer】Tip-Dip Tounchdown “Cadet & Craftsman” (c.1953-63)
今回はタッチダウン式のペンの中でも少しばかり「変わり種」のペンでエスターブルックと同じようにユーザー自身が簡単にニブ交換(スクリュー式)ができる、言わばシェーファー版”Renew-point”の”Tip-Dip”ペンを紹介します。エスターブルックほどペン先の種類は豊富ではないのですが、それでも当時16種類のペン先が用意されていたようです。この”Tip-Dip”ニブを装着できるペンが「カデット」とそれの金属キャップ仕様が「クラフツマン」で胴軸には硬質プラスチックが使用されており、キズが付きにくく結構丈夫な仕上がりとなっています。軸色のほとんどがパステル・カラーリングでとても50年以上前のペンとは思えない程発色がキレイですね。
※写真右、上からカデット・パステルブルー、カデット・バーミリオン、クラフツマン・パステルグリーン、クラフツマン・パステルグレー。
❏ニブの種類と判別方法。(全てスチール・ニブ)
X1=極細字、F1=細字、G1=ショートハンド、M1=中字、B1=太字、S1=スタブ
SX1=セミフレックス・極細字、SF1=セミフレックス・細字、SM1=セミフレックス・中字、SB1=セミフレックス・太字、SS1=セミフレックス・スタブ
FX1=フレックス・極細字、FF1=フレックス・細字、FM1=フレックス・中字、FB1=フレックス・太字、FS1=フレックス・スタブ
60年代に入り、セミフレックス、フレックスニブは整理されたようで最終的には6種類となったようです。これらのペン先は極珍しいもの以外は eBay や海外のペン・ショップなどで今だ購入可能ですが、エスターブルック”Renew-Point”より流通量がなく、年々販売数や出品数も減っており値段も徐々に高くなっているような気がします。(以前は5~10ドル程度、現在は15~25ドル程度が相場のようです)
※写真左はプラチック容器にはいったN.O.S.状態のニブ。写真右はレアな「SF1」ニブ。
ディテールと評価ですが、見た通り学生向けのペンとして開発され極力価格を抑えるため簡易ブリスター・パッケージに入れられてどこの街にもある小さな文房具店で販売されていたようです。ただ予想外のマーケットとして価格が安かったこととペン先がユーザー自身で交換可能で便利だったため、工場労働者(ペンを作業中に落とすことが多かったらしい……です)にも人気があって結構売れたようです。当時としては典型的な実用万年筆だったんでしょうね。そして50年代中頃~後半に「クラフツマン」がカタログ落ちした頃、「カデット」がマイナー・チェンジを行い首軸と胴軸が同じカラーリングとなり、さらに60年代に入りカラーリングそのものが変更になります。またモデル末期には14kペン先が装着された「カデット23」が少量生産・販売されました。こちらはクリップとキャップバンドが金メッキ仕様になっており、ペン先の交換も可能だったようです。さて、ペンの値段ですが以前だとせいぜい高くても20ドル程度で購入できたのですが、現在は状態が良いと40~50ドル程度と言うのが相場のようです。折からの円安傾向もあり「高く」感じますね。評価の方ですが、一言で言えばクセが無い上にとても書き易く万人向けの実用万年筆って感じですね。鉄ペンにも関わらず同時代の14kシェーファー・ニブよりシナリがあってインクフローはバツグンです。特筆すべき点は極細字や細字は本当に細い字が書けるのが「◎」です。現在売られている国産の鉄ペンと然程変わりはありませんし、持ち歩きやメモ用、会議用としてガシガシ使用するペンとして落としてもぶつけてもキズが付きにくいので勿体なくありません。もしペン先の状態が良く25ドル以下でペンを購入できれば価格に見合った以上の満足感は得られると思います。ペンの全長はキャップを閉じて約13.3cm、胴軸の直径は約11mm。メンテナンスは普通のタッチダウン式で消耗品は”O”リングと#15サイズのインクサックのみ。
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