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【ウォーターマン】米国製「ウォーターマン C/F」(c.1950s) +レストア編

公開日: : 最終更新日:2017/01/09 01-万年筆紹介, 02-万年筆修理・補修関連, M05-WATERMAN, s01-カートリッジ式

【WATERMAN’S】”WATERMAN’S C/F” [Gold Trim] made in U.S.A. (c.1950s)

タイトルに「レストア編」などと大げさなことをぶち上げましたが今回はレストアというよりクリーニングですね。もとより細軸のペンは苦手なのですがこのデザインに惚れて数年前に購入しました。未来的な予感を感じさせる造形美は当時としては相当ブっ飛んだデザインだったに違いありません。このデザインは当時のGM(ゼネラルモーターズ)スタイリストのボス、ハーリー・アールがデザインしたと言われるペンでどことなく50年代の古き良きアメ車を彷彿させますね。彼がデザインした「シボレー・ベルエアー」は買うことはできないが「C/F」ならなんとか買うことができました。さてペンの状態ですが下の写真の通りで外観はマズマズでしたが、セラーさんの入札前コメントで「何をやってもインクを吸わない」ということもあり俄然「購入意欲百倍」となってしまいました。この「C/F」はいろいろな個体を見てまいりましたが、ペン先回りや首軸にステインやスクラッチ・キズが付きやすいようでデザイン優先だったのか構造的に少し問題を抱えているように思います。

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※レストア前の外観の状態。

カートリッジ式ペンなので、最初は簡単に考えておりましたが「いやいやどうして」とても大変な思いをしました。まずは分解・洗浄。特に首軸回りにいろいろな機構が集中していますので慎重に分解して洗浄を行います。意外にも金属コネクターやペン芯は汚れが少なく何かが詰まっている様子もありませんでした。また、金属リングやゴム製のガスケットの状態も悪くなく消耗の度合いは軽微のようでした。ということで怪しい部分は「インナーフィード」と断定(写真下中央)。インナーフィードからインク溝(棒のようなヤツ)を外して24時間水にドブ漬けした後、内側(右側)よりコンバーターを利用した自家製洗浄スポイト(写真下右側)使って勢いよく水圧をかけたり、針で突っついてみましたがビクともせず貫通できませんでした。どうやらここが詰まっているようでした。こうなったらケミカルのチカラを借りるしかないのでプラチナ万年筆の「万年筆クリーナーセット」を思い出し、濃縮二倍の液体にドブ漬け。見る見るうちに液体はインク色に染まっていきました。半日後無事貫通。針で管内部の余分な汚れを落としさらに半日水にドブ漬けしてミッション完了、部品を元の状態に戻したものが写真下左側の状態です。

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※写真中央の「インナーフィード」のジョイント部分にインクが溜まる(逆流する?)クセがあるようです。

写真の通りインク溝が下から上へ上がっているのでペンを立てて保管すれば問題はないと思われますが、真横に長時間寝かせておくと恐らくインクが逆流してジョイント部分にインクが溜まるのではないでしょうか?また、ペン芯とインナーフィードのかみ合わせが微妙でこれが原因でペン先や首軸に汚れが付きやすいように感じます。設計自体に問題があるのかもしれません。ちなみに70年代に生産された「C/F」の分解された写真を海外のサイトで見たことがありますが、インク溝は「真っ直ぐ」に改良されており、ペン先や首軸にステインが付着した個体も見当たらないのでおそらくインナーフィードも改善されたのだと思います。マ~ぁ、このペンについてはそもそもアリゾナで20年以上もカートリッジが刺さった状態で放置された上、高温乾燥に晒されていたのが原因だと思いますが……。写真は外観も含めレストアが終了した状態のペンです。私は軸やキャップをコンパウンドでゴシゴシ削ってピカピカに仕上げることは好まず、キズやヘコミもあまり気にならないタチなのである程度の「使用感」を必ず残しております。今回の仕上がりはマズマズの出来で満足しております。

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さてペン自体ですが、元々のデザインが良かったせいかマイナー・チェンジを繰り返しながら発売開始~70年代にかけて20年以上も生産・販売された長寿モデルです。私的には50年代U.S.A.メイドの14kオリジナルモデルが好きですが、60年代以降フランス製(構造的・機構的にはこちらの方が断然良いと思われます)の18kペン先が付いたモデルの方が人気があるようです。リファインされるたびに洗練されて良い方向に向かうのですが、反面オリジナルデザインが少しづつスポイルされていくのが寂しいですね……。カートリッジ及びコンバーターは現在ウォーターマン社より販売されているものとは全く別物で互換性はありません。すでに廃番となって久しく国内での入手は困難で海外サイトで販売しているショップを探さなければなりません。見つけたとしても空のカートリッジでもかなり高価ですし、コンバーターとなると年々激レア扱いとなっているようです。購入する場合はその辺も考慮に入れた方が良いと思います。ペン先はガチガチのガチニブでインクフローはあまり良くありませんので、ウォーターマンやパイロットなどのサラサラ系インクを使うことをお勧めします。このペンを持つたびにつくづく「万年筆は機能とか構造、スペックだけでは語れ無いな」と思わされますね。

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