【パーカー】デンマーク製「ニュー・パーカー V.S.」（c.1950s）+エアロ・フィラー式

【Parker】”New PARKER V.S.”（c.1950s) + “aerometric filler” Made in Denmark.

以前、デンマーク製「パーカー V.S.」（c.1940s）+マイ・コレクションの記事中で少し触れておりましたが、この度はパーカーV.S.のエアロ・フィラー式バージョンをご紹介いたします。米国及びカナダでは1949年頃にボタン・フィラー式V.S.の生産は終了しますが、ヨーロッパでは人気が衰えなかったこともあり、1950年以降もエアロ・フィラー式に改良されたデンマーク製V.S.に限って生産・販売が継続されておりました。因みに旧型モデルと区別するため「New PARKER V.S.」と名称が変更されております。このブツも探し始めると中々見つけるのが難しく、結構なレアモノかな！？。まずは写真から……。

※ダークブルー軸＆金属キャップ仕様。写真右は胴軸のインプリント。

書き心地の特長としては旧型モデルと比べると良くも悪くもV.S.のテイスト感が薄れて、第一印象としては同時代のエアロ・フィラー式デュオフォールド・ファミリーと似たタッチ感を感じますね。突き詰めると色々細かい箇所が改良されておりますが、エアロ・フィラー式になった以外は仕上げや完成度は上々でチープ感も全くありませんでした。また外観アウトラインやペン先・ペン芯などの変更も無く旧型モデルからあまり変っておりません。但し、旧型モデルで気になっていた金属キャップの重さによるトップ・ヘビー感は劇的に解消されてペン全体のバランスが良くなり、全体的な書き心地や安定感が向上してより扱い易いモノへと進化したように感じます。ザックリ言えば、同時代のエアロ・フィラー式デュオフォールドの金属キャップ・バージョンのようなフィーリングを連想させますね。

※旧型と変らないペン先・ペン芯とオーソドックスなエアロ・フィラー式システム。

この個体はマズマズの状態でしたので、レストアには至らずクリーニングのみでほぼ完了しました。またペン先・ペン芯も良好で引き抜いて再調整する必要が無い上に、噛み合わせもバッチリでしたので8000番台のサンドペーパーでペンポイントのバリを取る程度で十分でした。後は（根気が必要な）アスコルビン酸によるペン先・ペン芯とシリコンサックの洗浄で作業は終了いたしました。但し、金属キャップやエアロメトリック管に発生していた小さなサビは（残念なことに）最後まで落し切ることができませんでした。

※アスコルビン酸に漬け込むこと約1日半。少しはキレイになりました。

ペンのディテールは全長がキャップと閉じて約13.8cm、尻軸に差すと約15.2cm、胴軸の直径が約11.8mm。旧型モデルとスペックの差はほとんどありません。エアロ・フィラー式ですのでペン先とインクサックの洗浄さえ怠らなければ、メンテナンスに問題を抱えることは無いと思います。さらに同時代のエアロ・フィラー式デュオフォールド・ファミリーと同じくシャーシには強化されたABS樹脂が使われておりますので、以前のモデルより丈夫でキズが付きにくくなった点は「◎」ですね。最後に私的な感想ですがペン全体のタッチ感がリファインされ、バランスも再考されてより良い方向に進化したことは十分認めますが、その分普遍的になり「V.S.らしさ」が少々薄まって面白さが半減したような気がします……しかし、これはこれで良しとしましょうね！！興味のある方はご参考にどうぞ。