【パーカー】デンマーク製「パーカー・スチューデント」（c.1950s）

【Parker】”Parker Student”（c.1950s） Made in Denmark.

デンマーク製パーカーの第三弾！「パーカー・スチューデント」を紹介いたします。このペン詳細は全く不明であり資料や情報はネット上にすら一切見当たらないミステリアスなペンの一つですね。どうやらデンマーク製のみのモデルらしく、本国（米国や英国）にはこのような名称のペンは存在しておりません。文字通り学生向けのペンなんですが想像以上に製品の完成度の高い上、コストダウンすべき部分と絶対譲れない部分がうまい具合に同居しておりユニークな仕上がりになっている当りが面白いですね。当時のデンマーク製パーカーのメインストリーム・ラインは英国製「パーカー・ヴィクトリー Mk.IV」をベースにした「パーカー・ポピュラー」というモデルがあり、これのパーツを一部流用してさらにコストダウンを図ったのが「パーカー・スチューデント」ではないかと想像（憶測であり確信は持てませんが……）しております。

※↑写真右のインプリントで「8・」は1958年製……?

さて、試筆後の感想としてコストダウンを感じる部分は三ケ所程度あり、一つはペン全体のプラスチックが軽く仕上がっており、安っぽさは無いもののデュオ・フォールドのような質感と重厚感がありません。二つめはペン芯がエボナイト製ではなくプラスチック製だと思われること、三つめは決定的でプッシュ・ボタンはアルミ製になっておりますが、吸引方式が旧来のボタン・フィラー式（パーカーは40年代中頃から段階的にボタン・フィラー式から「AF」アルミニウム・フィラー式に移行していくのですが……）のままだということです。とは言え、特に気になる点や問題点があるとは思えません。逆にコストダウンを感じないところとして「パーカー・ポピュラー」からの流用で同じ形状の14Kペン先が奢られていること、幅約1.5mmのシェブロン模様のキャップバンドが採用されていること、デュオ・フォールドと同じデザインのクリップ及びキャップの天冠（ジュエル）が付いているところです。涙ぐましいコストダウンを図りつつ、メリハリの効いた落し所が実に上手ですね。

※↑14kペン先とプラスチック製と思われるペン芯。写真右は旧来のボタン・フィラー。

ペンのディテールですが、全長がキャップを閉じて約13.4cm、胴軸の最も太い部分の直径が約11.5mm。シェーファー・ステイツマン（FAT）とほぼ同じスペックですが、キャップの刺さりが浅いので筆記時に少し長さを感じます。吸引方式はボタン・フィラー式でペン先はセミ・フレックスの細字。しかし、パーカーのペン先としてはかなり硬い部類に入ると思います。ガチとは言いませんが簡単にペン先が開きません。結構好みのペン先かな……。何だか書き始めるとパーカーを感じさせない「不思議な感触・感覚」があるようで……、何とも贅沢な学生向けペンでした……。