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【パーカー】フランス製「パーカー V.S.」(c.1940s)+ レストア編

【Parker】”Parker V.S.”(c.1940s) Made in France.

パーカー・ラッシュも今回の記事で一旦区切りをつけようと思います。昨年の春ぐらいからパーカー・ペンをコツコツ買い漁っておりましたが、この個体は特に状態が酷くレストアに時間が掛かりそうでしたので長らく(半年以上)放置状態でした。そしてこの年末・年始に手掛けることにしましたが、私的には得意ではない「ペン先の調整」に手間取ったため復活までにおよそ一週間程度掛かりました。先ずは写真から……。

 

※フランス製「V.S.」。外観的にはクリップに特長がありますね。

■レストア編

内部の構造・機構の欠損や部品の欠品などは幸いありませんでしたが、どういう訳か尻軸アルミニウム部分が錆付いていたため(アルミって錆びるの?)ボタンや尻軸のスクリュー部分がスムーズに動作せず、この錆落し?からのスタートとなりました。めん棒にサビトリ液を付けて根気良く錆を落としていき、さらにプレッシャー・バーも相当酷かったのでサビトリ液を水で5倍程度薄めて2時間程度ドブ漬けして、何とか錆を除去することができました。(この作業中、写真を撮る余裕はありませんでした)そして「AUTOSOL」でアルミ部分やプレッシャー・バーを磨き上げ、さらにシリコングリスを塗ってスムーズな動作を確認、最後にインクサックを取り付けてやっと作業が終わりました。(トホホ…)また外観も決して良い状態とは言えず、下地処理を行った後「プレ・リム+ルネッサンス・ワックス」で整えました。下の写真がクリーニングを終えた状態です。

  

※本当に手間が掛かりました。写真中央・右は胴軸のインプリント。

■ペン先・ペン芯の調整

購入当初からペン先がグラつく上にペン芯が動いたりする症状は出ていたのですが、これは原因が判るまで時間が掛かるような気がしておりました。まァ~それが放置していた理由でもあるんですが……。先ずは汚れが酷いのでノックアウトブロックを使ってペン先・ペン芯を叩き出し、例のアスコルビン酸にドブ漬けしました。幸いペン芯はシースルー・タイプでしたのでキレイになっていくのが判り易かったですね。その間に「ペン先のグラつき」をチェック。最初に首軸内部を見てみましたが、キズやヒビ割れ・削れも無くキレイな状態でした。次にペン芯をチェックしてみましたが、これもキズや変形・破損も無く特に問題があるとは思えませんでした。実際ペン芯だけ首軸に刺してもグラつきはありませんでした。ということで怪しいのはペン先だと断定して観察を続けると、付け根部分(ラウンド部分)が微妙に歪んでいる部分を見つけ出しました。簡単に言うと付け根部分が内側に丸まっておりました。これではニブとペン芯がジャスト・フィットするはずも無く、なるほどグラつくのが理解できました。そこで木の丸棒を使って内側から外側に向けてゆっくりと伸ばして元の状態(形)まで復元した後(この作業中、写真を撮る余裕はありませんでした)、ペン先・ペン芯を合わせて首軸に刺し戻しました。以後ペン先とペン芯のグラつきは全て解消されました。次にペンポイント部分ですが、前オーナーが歪んだ状態で無理矢理ペンポイントを強引に合わせていたようで歪みが直るとペンポイントが上下に大きくズレていました。これをヤットコや木の棒などを使ってペンポイントの位置を再調整して、さらに8000番台のサンドペーパーを使ってポイント部分の引っかかりとバリを取ってみました。これでやっと使用可能なレベルになりました。こうなった原因は不明ですが、ペン先・ペン芯にはキズが無いのでペン先に真横から何らかの圧力が加わったのではないかと推測しています。以下、調整後のペン先・ペン芯の写真です。

 

※本格的なペンポイントの調整は将来の楽しみに取っておきます。

■ディテール

ペン先はフランス製ですので18K仕様。字幅はXF(極細字)~F(細字)程度のフレックス幅の狭いタイプのようです。特長としては山型クリップの左側に縦配列で「P A R K E R」の刻印が入っており、キャップ自体は18K金張りで米国製より少し贅沢な仕様となっております。ペンの全長は約14cm、キャップを尻軸に差すと約15cm前後、胴軸の直径が約11.8mmで「米国製パーカーV.S.」と全く同じです。ただどういう訳かフランス製の方が軽く仕上がっているのが不思議ですが……!?

  

※「DOUBLE OR LAMINE」(英=Rolled Gold ・米=Gold Filled)は「金張り」の意味。

この度のレストアは、ほぼジャンク状態からの復活と言っても過言ではないと思うくらい手間と時間を掛けて終わらせました。正直に言って「疲れました」。ただフランス製V.S.はめったに表に出てこないので、貴重なペンを修復した妙な満足感だけが残りました。その後ペンはすこぶる調子が良く、十分日常的に使用できる状態に生まれ変わり米国製V.S.とのエッセンスの違いを楽しんでおります。両者は「似て非なるもの」のようで全く別モデルのように感じますね。そしてここ数ヶ月間様々な国々で製造されたパーカー・ペンに触れてみて期待以上の時もあれば、そうでない場合もあったりと色々と楽しませてもらっております。この時代のパーカー・ペンは多様性とアプローチの違いが面白く、現代の画一化された製品では味わえない複雑な楽しさが潜んでいるように思えますね!

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