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【バヤール】「フィット 840」(c.1950s)+外観レストア編

【BAYARD】”Fit de BAYARD 840″ (c.1950s) made in France.

今回は「バヤール フィット 840」のディテールと前回記事にした「プレ・リム」コンパウンドを使った外観レストアの同時掲載となります。少々長くなりますが、お付き合いください。

■レストア編

この「バヤール フィット 840」は、私にとってはじめてのアコーディオン・フィラー式の万年筆となります。この吸入方式は少々厄介なシロもので構造や操作は単純なんですが、ジャバラなゴムサック部分が破損するとリプレイスすることがきず、同じ形状のフィラー一式を交換するかあるいは改造するしか方法がありません。しかしフィラー一式のパーツを見つけることはほとんど不可能でしょうね。こう言った理由からアコーディオン・フィラー式は避けてきたのですが、まァ~、一本ぐらいあってもいいかなと思い購入してみました。以下、写真の通り内部機構は現在のところ全く問題なく動作しているので今回は洗浄のみ行い、この部分のレストアは必要ありませんでした。

 

※構造は単純ですが、何とも厄介ですな……。

と言うことでレストアは外観のみとすることにしました。前回記事の「プレ・リム」コンパウンドを本格的に使ってみたかったので、今回順を追ってご紹介いたします。私はルータなどを使って「バフ掛け」は一切やっておりません。あくまでも手磨きに徹しております。

 

※レストア前の状態。ツヤが無く無数のスレ傷。胴軸には何やら白っぽいキズが……。

①下地コンパウンド

台所用中性洗剤で表面の汚れを洗い落とし、その後半日程度自然乾燥させます(上の写真が乾いた後の状態です)。乾燥後、キズの状態を確認して以前記事にした万年筆の胴軸やキャップのお手入れ」の下地用「3Mコンパウンド」を使用して磨いていきます。この現状ですので「極細目」、「超極細目」両方を使うことにします。ただその前にマスキング・テープを使って金属パーツ部分を覆います。これは金属パーツを何度も擦ったりするとメッキが剥がれる可能性があるのでマスキングした方がベターですね。

 

※クリップやキャップリング、それと胴軸のインプリントも覆います。

「3M極細目」コンパウンドを胴軸・キャップ・尻軸に塗って柔らかいウエスなどを使って磨き始めます。キズの状態を確認しながらスクラッチ・キズなどが見えなくなった(磨きすぎに注意!!)ところで止めます。次に下地の仕上げとして「3M超極細目」コンパウンドを使い、同じように胴軸・キャップ・尻軸に塗ってから柔らかいウエスなどを使って磨き始めます。少しツヤが出てきて小さなキズが見えなくなったらそこで止めます。但しここら辺の加減は個人の好み次第です。

 

※「極細目」コンパウンド→「超極細目」コンパウンドを拭き取った状態。

上の写真は、「極細目」コンパウンドを塗りから始めて「超極細目」コンパウンドを拭き取るまでの変遷です。途中行程の写真を端折っておりますが上の写真中央・右側が最終形です。細かいスクラッチ・キズや白っぽいキズもキレイに無くなりましたね。ここで下地作業は終了となります。

②「プレ・リム」コンパウンドの使用

下地作業が終わったらクリップ・キャップリング・インプリントを覆っていたマスキング・テープを全て剥がします。今度はペン全体に「プレ・リム」コンパウンドを塗ってきます。そしてキズの状態を確認しながらウエスで拭き取っていきます。コンパウンドを使う行程はここが最後ですので、もし気になる部位があるようでしたらほんの少し「プレ・リム」を追加塗布して(沢山塗ってはいけません!)念入りに磨いていきます。この先どこで磨きを止めるかは個人の好みと判断でイイと思います。私の場合は以前から言っていますが「ピカピカ・ツルツル」は好みでは無いのと「若干の使用感」を残したい方なので、少しツヤが出てきたところで止めています。

※「プレ・リム」の塗布 → 磨き終わり。使用感を残しつつもツヤが出てきましたね。

③ワックス掛け

ここでは「ルネッサンス・ワックス」を使うことにします。ワックスの量については多く塗布すると輝きは良くなりますが、ペンを持った時にツルツル滑りやすくなります。また量が少ないとその分輝きが鈍くなります。この辺は個人の好みで良いと思いますので、コンパウンドの塗布ほど神経質にならなくてもイイと思います。塗った後はウエスなどでワックスを落としていきます。

※このワックス量でこの輝きです。何やら尻軸に数字が見えてきました。

最後に「マイクロ・ファイバー・クロス」でペン全体を拭き終えればここで作業は終了となります。まァ~、特にコツというものは無いのですが強いて言えば、キズの除去具合いは80%下地処理のデキ次第ですね。

 

※仕上がりは適度な使用感が残っていて、マズマズのデキかな!?

 

※胴軸のインプリントと尻軸のナンバー。

■ディテール

バヤールのアコーディオン・フィラーは50年代後半~60年代初めまでの数年間のみ製造・販売されていたようですので、おそらく50年代後半のモデルではないかと推察しております。ペンのデザインはバヤールらしいシンプルでこれと言った特長は無いものの、重さやバランスは中庸でとても扱いやすいモノに仕上がっております。ペン先は18kの極々オーソドックスなオープン・ニブでセミフレックスの細字。柔らかくてシナリもあるのですが、フレックス系のペン先が苦手な私が使っても思った以上にコントロールできているあたりがこのペンの素性の良さを感じますね。理由ははっきり判りませんがナゼか惹きつけられてしまいます。う~~ん、ここら辺がフランス製の万年筆の奥深さと醍醐味なのかもしれませんね。

 

※オーソドックスなセミフレックスの細字ペン先。インクフローも潤沢です。

ペンの全長はキャップを閉じて約13.7cm、キャップを尻軸に差すと約16cm、胴軸の直径が最も太いところで約12mm。大きさの割りに取り回しが楽で意外にコントロールしやすいところが気に入っております。錯覚だと思いますが、セミフレックスに慣れてきたのかな?と思わせるあたりが実にニクイですね。軸色は黒っぽく見えますが、少しグリーンが入ったグレー色でこの時代に有りがちな「塩ビパイプ色」とは一線を画しております。写真では再現しきれておりませんが、他ではこの色は見当たりませんね。そして最後におそらくこれからも「バヤール」探しは続く……と思います。

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