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趣味としての万年筆は持っていないの?⑥

「趣味としての万年筆は持っていないの?」の第六弾!!

❏Pitman’s “FONO” Special 762 1950年代【ショートハンド・ニブ】

Pitman’s(ピットマンズ)社は19世紀中頃に「英国式速記(ショートハンド)」を考案したアイザック・ピットマン卿に端を発しており、1920年代よりオフィシャル・ペンを販売しておりました。自社製造はせず外部委託生産(スワン、コンウェイ・スチュワート、サミット、ワイバーンなど……)によるオリジナル・デザインの「FONO(フォノ)」シリーズをリリースしておりました。特に戦前に製造・販売されていた製品はレアモノや珍品が多くコレクション価値が高いとされており、英国にはコレクターや愛好家が多いと聞いております。しかし戦後はマス・プロダクションが主流となりオリジナル・デザインのペンは徐々に姿を消していき、次第に他社が量産したペンにピットマンズの刻印と自社ショートハンド・ニブ(これまた外部委託生産した英国製汎用ニブ)を組み合せた製品が主流になっていきました。私的には実用性という視点から戦前に製造されたブツはスルーしておりますので、今回は戦後販売された「FONO」モデルの一つをご紹介いたします。まずは写真から……。

 

※何かに似てませんか??

まァ~、ネタぽくって申し訳ありませんが、!!!!!まんま、「ウォーターマン L2」ですね!!!!! 違いはキャップリングやクリップがクローム仕上げで、胴軸のインプリントとペン先・ペン芯部分が戦後仕様のセオリー通りですね。但しペン芯のみオリジナル・デザインのものが組み込まれており、溝が深くてフローが良さそうな設計となっている点は興味深いですが……。そして胴軸に堂々と臆することなく「MADE IN ENGLAND BY WATERMAN」とインプリントされている潔さが「◎」ですね。

  

※英国製14ct(14k)汎用ニブと個性的な構造のペン芯。(マッチング後の写真)

❒レストア編

ヴィンテージのショートハンド・ニブを搭載したペンは「速記」という性格上、どうしても荒っぽく扱われたモノや使い込まれたモノが多く、状態が良いものは決して多くありません。最低限ボディ・ワークやクリーニングは必須であり、ペン先とペン芯のマッチング作業やペン・ポイントの微調整が必要な場合がほとんどですね。今回のブツはマズマズの状態でしたが、当然そのまま使用できるシロモノではありませんでした。ただ幸いなことに構造的にウォーターマン L2と同じなので、レストア自体は然程難しいものではありませんでした。以下、レストア前から分解洗浄・ボディ・ワークまでの写真をアップしておきます。

 

※↑レストア前の状態。良い状態とは言えませんね。(セラーさんの写真を拝借)

※↑「分解洗浄」→「ボディ・ワーク」後。

構造的・機構的なことも含め「ウォーターマン L2」と全く同じスペックで各パーツ類も共通しております。クオリティは「エスターブルック並み」といったところでしょうか。書き心地やタッチ感はウォーターマンそのものですが妙な安っぽさが伝わってきます。ウォーターマンであってウォーターマンでは無い……ような不思議な感じがしますね。結論から言えば実用一点張りで面白みが無くこれといった特長もありませんが、ただグレッグ・ニブと比較するとこちらの方がより実践的で本格派のような気がします。私的には「この珍妙さ」が気に入っております。このような「珍品」に興味がある方、ご参考にどうぞ!

※P.S.=Pitman’s(ピットマンズ)社はIT系資格試験で有名なピアソン社傘下の一部門として現在もカタチを変えて存続しております……中々強かで英国らしい会社ですな!!

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