【パーカー】デンマーク製「ビクトリーMk.V」（c.1950s-60s）+分解レストア編 -②-

【Parker】”Parker Victory Mk.V”（c.1950s-60s） Made in Denmark. -②-
この度は2回目の50年代デンマーク製「パーカー・ビクトリー Mk.V」のご紹介です。前回はインプレが中心でしたが、今回はエアロ・フィラー式の分解・レストア編のお話が中心でペンの構造などを解析していきます。この個体は「細字（F）」ですので「ヌラヌラ」系ではありますが、「中字（M）」とはかなりタッチの違いを感じますね。まずは写真から……。

※外観コンディションは比較的良好。

今回のブツは外観コンディションは前回よりかなり良い状態でしたが、インクの吸引が全くできず途方にくれておりました。特にエアロ・フィラー式のようなシンプルな構造故にインクが詰まっている場合などは尚更ですね。教訓として構造が単純で原因が判っているほどリペア・レストアが簡単では無いことに気づかされました。通常、インクの吸引ができない時はペン先・ペン芯を外して洗浄することでほぼ解決することができるのですが、下の写真通りペン先とペン芯のマッチングがほぼ完璧な状態だとペン先・ペン芯を引き抜くことに躊躇してしまいます。なぜなら元に戻る保証がどこにも無いからです。そこで今回は引き抜きを諦めて忍耐力を持ってドブ漬け洗浄に徹することにしました。「アスコルビン酸→ロットリング洗浄液→アスコルビン酸→ロットリング洗浄液」を何度も繰り返して洗浄を行い、トータル約7日間かけてやっと貫通しました。最初はブルー系インクが流れ出てきましたが、次のレッド系インクが強烈で何やら洗浄液をもってしても溶けきれない粒状のカタマリが大量に排出されておりました。これに約3日間費やしました。そして峠は越えたものの、今度はグリーン系インクの残骸が流れ出てきてさらに約2日半かかりましたね。ここまでやってやっと無色透明となり、空気の流入ができるようになりました……。

※ペン先の表面は若干キズがあるものの、かみ合わせはほぼ完璧かな？

さて丈夫で長持ちが定評のパーカーのシリコン・サックと金属筒ですが分解してみました。金属筒をニップル・ジョイントから外すときに特に注意が必要です。ここは接着剤（シェラック）でガッチリ接着されていますので、比較的高温のお湯（70℃～80℃程度）で一日半～2日程度かけてゆっくりと接着剤（シェラック）を剥離させていきます。ここで焦ったり、急いだりするとニップル・ジョイントを破損する（折る）確率が高くなりますのでご注意ください。

※ニップル・ジョイントから金属筒とサックを外した写真です。

さて、若干着色はあるもののサックの硬化や穴が開いてる箇所などは全く無いのでそのまま再利用することにしました。因みにオレンジ色のオリジナル・サックは珍しいですね。ここから先のレストアは然程難しいところは無く「ニップルとインクサック」の接着 → 「ニップル・ジョイントと金属筒」の順に接着（写真下参照）してきます。接着剤はシェラックを使用します。こうして元の状態に戻していきます。

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※特に難しい作業ではありませんが、確実に接着していきます！

あとは水で吸引の確認ができ、首軸・胴軸・キャップを組み上げて元に戻して作業は終了なります。特にここは難しいことはありません。このように構造的には他国製エアロ・フィラー式の構造もほぼ同じと思われるので、ここを抑えておけばP51やP17などのエアロ・フィラー式のレストアにも応用できると思いますのでご紹介してみました。（ただ若干構造的に違う部分もあるかもしれません）前回掲載の50年代デンマーク製「パーカー・ビクトリー Mk.V」と合わせてご参考にどうぞ！！