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【スティルミン】「303(カートリッジ式)」(c.1960s)

公開日: : 最終更新日:2018/08/04 01-万年筆紹介, M17-STYLOMINE, N06-フランス, s01-カートリッジ式

【STYLOMINE】” 303 ” Cartridge Filler(c.1960s).  Made in France.

本年もマイペースな更新頻度ですが、よろしくお願いいたします。

今は無きフランスの老舗メーカーだった「スティルミン(Stylomine)303シリーズ」の最終モデル(カートリッジ式)をご紹介いたします。この「303シリーズ」は戦前から戦後にかけてデザインや構造を進化・更新しながらスティルミンの定番商品として永らく継続販売されておりましたが、このペンはその最期のモデルとなります。まずは写真から……。

  

※まァ~、素っ気無い!ですね。クリップに「303」の刻印があるだけ!!

1950年代に入り世界的に万年筆製造・販売メーカーは需要の変化・減少と共に淘汰の時代に入り、廃業・倒産・合併の時代を迎えることになりました。勿論フランスに於いてもこの流れから逃れられず、すで消滅してしまったメーカーもいくつかありました。企業の生き残り戦略としての合併・吸収はいつの時代も常套手段ですが、当時まだ存続していた複数のフランスメーカーはこれを潔しとはせず、コンソーシアムを結成してこの危機を乗り越えようとしていたようです。簡単に言えば企業としての独立性は保ってはいるものの、製品の型枠やシャーシ・パーツ類は共同で開発しその共通(共有)パーツをベースに若干アレンジを加えて自社商品をリリースする手法です。近・現代の自動車にも見られる手法ですね。ただこういったやり方は製造工程の短縮や原価の切り下げなど直接的なコストダウンにつながりますが商品として魅力に欠け、どれも同じような製品に見えてしまうのが難点です。前置きが長くなりましたが、最期の「303(カートリッジ式)」はそんな状況下で製造・販売されていたペンの一つです。かつての「303」のような華やかさや独創性は影を潜め、単なる量産品の安物ペンに成り下がったように見えますがペン自体のクオリティや機能性は決して悪くありません。私的にはこの時期(60年代)独特のフランス製万年筆のタッチと書き心地がユニークで楽しいと思っておりますので、モノ(ペン)としては肯定的に捉えております。

 

※キャップ下部にホールマークがありますが、金張り or メッキなのかは不明です。

ペンのディテールは全長がキャップを閉じて約13.2cm、キャップを尻軸に差すと約14.6cm、胴軸の直径が約10.5mm。重さはメチャクチャ軽く仕上がっており若干チープ感はあるものの、質感は思った程悪くはありません。ペン先は18k爪型でニブ本体の形はオープン・タイプのようで、全くシナリの無い「極細字~細字」程度の通常タイプのニブですね。因みに軸とキャップの接合方式はネジ式。

 

※ペン先は爪型ですが、ニブ本体は18kオープン・タイプですね。

購入時「BUSカートリッジ」一箱が付属しておりましたが、単品では見つけることすら困難なカートリッジで eBay サイトでも年に1、2度お目にかかれるかどうかという希少さです。これに比べればウォーターマンC/Fカートリッジなどは普通の商品に感じますね。そして以前より「BUS」の意味がわからず単に商品名だと思っておりましたが、実物が到着して「B=Bayard, U=Unic, S=Stylomine」3社の共通カートリッジだということが判明いたしました。こんなところにもコンソーシアムの影響がありますね。まァ~、合理的に考えればバヤールにも使えることが嬉しい誤算……でした。

  

※「BUSカートリッジ」のナゾが解けました。

60年代フランス製金ペンの共通した特長としてはペン先が硬く字幅も細めでシナリもほとんどありません。フローは概ね渋めの傾向にありますがインクが途切れるようなことは無く、紙当りが柔らかく反発力が少ないので長時間書き続けても手や指に負担がかかりません。また強烈な個性が無い反面、極々平凡で実用的な万年筆が多いように思いますね。と言うことで前回紹介した「パーカー17・レディ・カスタム」を含め「リーニュ60」、「バヤール」、「スティルミン」の書き比べを時間をかけて始めようと考えております。

※未だ未知数の60年代フランス製のペンたち。

その後、生き残り賭けてコンソーシアムを結成したものの60年代初めにUnicが廃業、BayardとStylomineもその数年後万年筆市場から姿を消してしまいました。結果としてコンソーシアムも単なる延命策だったのかも……知れませんね。今回は時代と共に置き去りにされ、未だ評価が定まらない60年代フランス製万年筆についてスポットを当ててみました。私的にはここに未知の面白さと魅惑が潜んでいるような気がしてなりません。少々物悲しい歴史的顛末でしたが、ご参考にどうぞ……。

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