*

【エスターブルック】「LK」(後期型デラックス・ペン)+ レストア編(c.1955-60s)

【ESTERBROOK】“LK” Deluxe Pen late model.  (c.1955-60s) made in U.S.A.

久し振りの更新&約2年振りとなる「エスターブルック」の紹介となります。以前より欲しい欲しいと思いつつも、長らく入手ができなかったデラックス・ペンの後期型「LK」を取り上げます。このブツはエスターブルック最後のレバー・フィラー式金属キャップ仕様モデルとなります。以降はエアロ・フィラー式の「M2」に引き継がれ、やがて1960年前後を境に順次カートリッジ式へ進化していきます。先ずは写真から……。

  

※軸色は「ロイヤル・ブルー」でレトロチックな枯れたダーク・ブルーという感じですね。

このペンは以前ご紹介した「SM」(初期型デラックス・ペン)+ ヴィーナス・ニブ(c.1949-55)の後継モデルで主な違いはキャップのデザイン、軸とキャップの接合方式がスリップ・オンからネジ式へ、レバーのツマミ部分がヘラ型(お好み焼きを焼く時に使うヘラのような台形型)からスプーン型(丸型)にそれぞれ変更されました。また「SM」にあったキャップと尻軸の天冠が「LK」では廃止となり、平たいスジの入った金属製のものへと変えられました。これがデラックス・ペンとしてのモデル・チェンジ版なのか、或いはマイナー・チェンジ版なのかは議論の分かれるところですが「SM」との外観上の共通パーツはほとんどありません。そしてこのペン最大の特徴はキャップを尻軸に差して筆記する時のバランスが絶妙に良いところです。こんなにバランスの良い金属キャップ仕様のペンには滅多に出会うことができません。もちろん「SM」の金属キャップより軽いですが、チープ感とトップ・ヘビー感は感じられず上手に仕上がっていると思いますね。反対にデメリットは多くの海外ユーザーが指摘している通り、胴軸のプラスチックそのものが柔らかいためにキズが付き易いという点です。このため尻軸辺りにキャップを差した跡が残り、キズとなってしまった個体(私的には気になりませんが…)が多いように思います。ペン先はイリジウム・ポイント付マスター・シリーズの「9556(Firm Fine)」。良くも悪くもエスターブルックらしいクセや特長が無い極平凡な鉄ペンの「細字」が付いていました。ただペン芯には少しキズがありましたが、使用する上では問題はありませんでした。

 

※コレと言う特徴がない極々平凡な「細字」ですね。

■レストア編

この「LK」に限らず、エスターブルック全般に言えることですが純正品のJバーが破損している場合、汎用品との交換が必要になりますが、ジャストサイズが無く調整・加工が必要となる場合が多いことが難点ですね。「汎用54mm」では少々長すぎ、「汎用40mm」では長さが足りません。しかし、今回ラッキーなことにコルク製のスペーサーが軸内部に入っていたため調整・加工無しで「汎用40mm 」Jバーを使うことができました。(このコルクが純正品なのか、後から修理業者が考えたものなのかは不明ですが、何れにせよナイス・アイデアですね!!)それともう一点は胴軸と首軸の分離が非常に難しいことです。ここは熱膨張を利用して外すのですが3~5分程度かかります。とにかく焦りは禁物ですのでゆっくりと気長に構えるのが理想ですね。慌てると破損の確率は高くなると思います。

 

※レストア前(写真左)の破損したJバーと新品汎用40mm Jバー(写真右)。

ニップルの直径は約7mm弱で、これはエスターブルックとしては珍しく大きいサイズですね。このサイズだと使用するサックは#17sなのですが、インクサックの長さが短いのでワン・サイズ下の#16sを使うことにします。これによりインクの吸入量は減りますが(おそらくサックの長さに対して1/3程度のインク量しか吸入されないと思います……)吸入スピードは少しだけ速くなるかも知れません。(写真下・右)

 →  → 

※Jバー挿入からインクサックをカットして接着するまでの行程。

仕上げにはサックにタルク・パウダーをマブして、接着部分にはワセリンを塗ります。また今回は胴軸と首軸を接合してもグラつきや歪みなどの不快な症状が一切無かったのでワセリンのみを塗って結合しました。その後は特に問題は発生しておりません。

※インクサック接着後の後処理。

さて、エスターブルックで欲しいと思うペンはこれが最後となりました。今後、エスターブルックのペンを個別に記事にすることは(おそらく)無いと思いますが、過去にレストアしたものなどはマイ・コレクションとしてアップしていきたいと思っております。また本ブログ上でエスターブルックのユニークさと特殊性をお伝えできたことを嬉しく思います。そしてレストアに興味ある方々は是非、参考にしてみてください!!

関連記事

レバーフィラー式のサック交換

レバーフィラー式のインクサック交換をご紹介いたします。但しかなり我流の部分がありますのでご容赦くださ

記事を読む

「プレ・リム」 コンパウンド

"PRE-LIM" Compound made in England. 今回は新たに入手した貴

記事を読む

【ウォーターマン】カナダ製「クルセイダー」前期型(c.1946-48)+レストア編

【WATERMAN】Early "Crusader (Taperite)" (c.1946-48)

記事を読む

【シェーファー】タッチダウン「クラフツマン」(c.1950-52)

【SHEAFFER】Touchdown "Craftsman" (c.1950-52) ここ最

記事を読む

趣味としての万年筆は持っていないの?⑥

「趣味としての万年筆は持っていないの?」の第六弾!! ❏Pitman's “FONO" Spe

記事を読む

趣味としての万年筆は持っていないの?⑧

「趣味としての万年筆は持っていないの?」の第八弾!! ❏Skribent “SUPER 2” (1

記事を読む

【エスターブルック】英国製「LJ」(ロング・スレンダー)+リントン・ニブ(c.1950s)

【ESTERBROOK】"LJ" J-Family  (c.1950s)  U.K. Model w

記事を読む

【ウォーターマン】イタリア製「 ヴァンガード 」(c.1960s)

【Waterman】"Vanguard" (c.1960s) made in Italy. 今

記事を読む

【パーカー】カナダ製「デュオフォールド」(c.1948-50)+分解レストア編

【Parker】"Duofold"(c.1948-50)Made in Canada. メーカ

記事を読む

趣味としての万年筆は持っていないの?⑦ =10/28追記(ペン先交換しました)=

「趣味としての万年筆は持っていないの?」の第七弾!! 今回は1920年代~40年代にかけて一世

記事を読む

趣味としての万年筆は持っていないの?⑪

「趣味としての万年筆は持っていないの?」の第十一弾!! ❏"Sh

趣味としての万年筆は持っていないの?⑩

「趣味としての万年筆は持っていないの?」の第十弾!! ❏"MAR

趣味としての万年筆は持っていないの?⑨

明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。 「

趣味としての万年筆は持っていないの?⑧

「趣味としての万年筆は持っていないの?」の第八弾!! ❏Skribe

【マビー・トッド】インド製「スワン・ジョッター」 (c.1960s) + エアロ・フィラー式

【MABIE TODD & Co.】”SWAN JOTTER”

→もっと見る

  • 2024年4月
    « 1月    
     123456
    78910111213
    14151617181920
    21222324252627
    282930  
Translate »
PAGE TOP ↑