【パーカー】米国製「パーカー V.S.」(c.1940s)+ ボタンフィラー式レストア編
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最終更新日:2017/01/09
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【Parker】”Parker V.S.”(c.1940s) Made in U.S.A.
今回は「パーカー V.S.」のレストア編です。ボタンフィラー式なので以前紹介した「アッカーマン」と基本構造は同じです。このモデルはペン本体の材質にアクリル樹脂を使っていますので、ラテックス(ゴム)製インクサックでも問題はありません。構造も比較的単純で作業も然程難しくありません。まずはいつもの内外部の洗浄・分解から。
❏分解・洗浄~インクサック交換まで。
※写真左より、分解→インクサックの長さ・カット位置→接着 と流れていきます。
写真左でペン全体の外観磨きはほぼ終わっています。特に部品の欠品もありませんが、プレッシャーバーだけは前オーナーが交換されたようで、リプレイス用の汎用品が付いておりました。比較的新しいものに見えますのでそのまま使います。この汎用プレッシャーバーは66mmタイプで中サイズ程度のものですが、ほんの少し長さが足りないような気がします。(動作には問題ありませんが……)
次に(写真中央)インクサックのカット位置を決めます。ニップルの直径が約6.5mmなので#16サイズを使いますが、古いサックを見ると少し大きく見えますね。これは「ネックド・サック(Necked Sac)」と言って切り口が細くて後半部が太い特徴的なサックです。しかし、いちいちサックをその都度買ってたらキリがないのでここは手持ちの#16s(ストレートタイプ)で代用することにします。(インクの吸入量は減りますが動作には問題ありません)そしてシェラックで接着して30分程度放置します。(写真右)
❏組み上げ(組み付け)
写真左より、接着が確認できたらインクサックに「タルク・パウダー」をマブした後、ニップル周りに軽くワセリンを塗ります。胴軸と首軸を組み上げたら、胴軸後部よりプレッシャーバーをサックの上に乗せる感覚で首軸に向けてゆっくり押し込んでいきます。やがて「コツン」と音がしたら押し込むをやめてボタン・キャップをはめ込みます。はめ込んだ後、ボタン・キャップを押して適度な反発力を感じることができればここで作業は終了となります。最後に水道水をコップに入れて吸入・排出確認します。
❏ペンのディテール
14kオープンタイプ・ニブが装着されたパーカーらしいシンプルでオーソドックスなデザインの万年筆ですね。色は RUST (錆色)と言うらしいのですが、北海道に住んでいる私としてはこれは道庁の「赤レンガ色」ですな……。中々有りそうで無い色合いで結構気に入っております。ペンの全長は約14cm、胴軸の直径が約11.8mmで大柄で見た目以上に軸が太いのですが、キャップの差さりが深いので意外にコンパクトなサイズになります。因みにキャップを尻軸に差すと全長が約6インチ(約15cm前後)となり、シェーファー・ステイツマンやウォーターマン515とほぼ同じサイズになります。また、写真右のインプリントが「. 7 .」と刻印されているのでおそらく1947年製、この前後ドット2コは「第二四半期(2nd quarter date code)」製造の意味があるそうです。
ペンの仕様ですが、ほとんどの「V.S.」はペン芯が透明なタイプ(Wearever のC-FLOWとほぼ同じ?)とAFフィラー式(アルミニウム・フィラー式)の組み合わせが定番のようですが、この個体は黒いペン芯(エボナイト製?)とプッシュ・ボタンにアルミが使われているものの、アルミの襟がない旧来のボタンフィラー式のままという珍しいタイプなのだそうです。あまり見かけませんね。最後に試筆した感想ですが、驚いたことにパーカーとしては例外的に字幅が細く、ガチニブでフレックスの微塵も感じません。シェーファーとは少し異なるガチニブ感とインクの流れ(シェーファーは流れの良さを感じますが、パーカーの方は潤沢感を感じます)があり表現は難しいのですがシェーファー・ステイツマンに金属キャップを被せた感じですかね。これはこれで個性があっていいですね~。いろいろ驚きと意外性があって面白さ・楽しさが伝わってくるペンですが、ほんの少しパーカー好きの気持ちが解ったような気がします。イゃ~~マジ、いいよコレ!!
※黒いペン芯&ボタンフィラー式の組み合わせが珍しい「V.S.」。
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